しずおかキャンパる

老舗製茶メーカーが生み出した抹茶スイーツブランド「ななや」に迫る。

 「ななや」は1907年創業の「丸七製茶」が、2010年に始めた抹茶スイーツブランドである。店名の通称にも使われている「ななや」の静岡県内の店舗は藤枝市にある本店と、静岡市内の静岡店の2店舗だ。今回私たち取材班はこのうち静岡店の従業員にインタビューした。
【「ななや」取材班】

「世界でいちばん濃い」抹茶スイーツ

外観
=「ななや」静岡店

 ななやは、抹茶ジェラートや抹茶チョコレートが楽しめる抹茶スイーツの店である。ななやの特徴は、ただの抹茶スイーツでなく「世界でいちばん濃いこと」である。その濃さの秘訣は、自社生産の高品質の抹茶を使用していることにある。看板商品である抹茶ジェラートの産地は、藤枝市北部の山間地に限られ、大地の土壌分析を行い、過不足のないミネラルバランスを持つ土壌づくりにより、理想的な抹茶作りを実現している。また、工房の隣に本格石臼挽き抹茶工場があり、挽きたての抹茶を製品化することができるため、抹茶の香りを存分に楽しめるのである。

 今回取材先として「ななや」を選んだ理由は、主に二つある。一つ目は、静岡県内と東京、京都にまで展開している県内発祥の店舗ということで、県の魅力発信に大きな貢献をしていること。そして二つ目は、日本にしかない抹茶という素材を生かしたスイーツで海外観光客までも引き寄せている魅力の強さである。

 これらを見ていく前に、ななやについてもう少し紹介する。ななやは店舗販売だけでなくオンライン販売もしており、ジェラートやチョコレート、抹茶ロールなど多様なスイーツが購入できる。ふるさと納税でも人気なのが、この後詳しく紹介する7種類の抹茶ジェラートと、藤枝ハイボールシロップを使用したシャーベットの八つセットだ。またこの商品には、ホットでも冷茶でもおいしくいただけるミシュラン店のお茶、禅30グラムもセットになっている。記事を読んで興味の湧いた方は、ぜひ公式サイトをみてほしい。

海外観光客が全体の7、8割


「静岡抹茶ジェラート」
=「ななや」静岡店

 そんな、ななやの看板商品こそが静岡を代表する絶品スイーツ、静岡抹茶をふんだんに使用した「世界で最も濃い抹茶ジェラート」だ。なめらかな口当たりと鼻を突き抜ける抹茶の風味、濃厚であっても決して苦くはない深い味わいが、販売開始から現在に至るまで人気を集め続けている。また、7段階から濃さを選べるというユニークなシステムも、人々に長く愛される理由の一つだ。抹茶の味をダイレクトに感じられる唯一無二のジェラートは、ななやを一躍大人気店に押し上げた。そのクオリティは国内だけに留まらず外国でも高く評価されている。なんとゴールデンウィークや夏休みには、海外観光客が全体の7、8割を超える日もあるという。

 海外観光客からの人気を集める商品は「抹茶ジェラート」だけではない。最近発売が始まった「極上ドリップシリーズ」もまた、旅行土産として買い求める海外客が後を絶たないという。その特色は、コーヒーのように様々な茶をドリップ形式で楽しめる点だ。急須で入れたような本格的な茶を自宅で手軽に味わえる「極上ドリップシリーズ」は、値段も手ごろで、タイムパフォーマンスを気にする現代人に見事にフィットした商品である。


「極上Drip Tea」
=「ななや」静岡店

 茶屋である以上忘れてはならないのが、茶葉である。スイーツ系に重きを置いているとはいえ、お茶本来の味わいを感じるには、やはり煎茶(せんちゃ)がおすすめだ。

 一言に煎茶といっても種類は多く、多種多様な品種が並んでいる。茶葉によって香りや味はかなり違ってくるという。低カフェインのものや希少な茶葉を使ったものなどもあり、ぜひ実際に店頭で見比べて好みのお茶を選んでいただきたい。

 一方、お茶離れの進む若年層へ向けた商品も展開している。急須が家になく茶葉でお茶をいれない人のために、粉末タイプやティーバッグ式のお茶も取りそろえている。自宅で簡単に飲むことができるので、手に取りやすいことは間違いない。

 「ななや」が力を入れている商品に、抹茶チョコがある。菓子のチョコレートに抹茶の風味が組み合わさったもので、種類も多く、ギフト用としても売り出している。

 特にななやの看板商品、抹茶ジェラートのように、七段階の濃さから選ぶことのできるカップチョコは、さらに和紅茶やほうじ茶など多くの種類を楽しむことができる。

様々な商品が並んだ棚
=「ななや」静岡店

飲み物よりもスイーツとして親しまれる存在

 かつて日本の食卓に欠かせなかった急須と湯のみの風景が、今では少なくなってきた。ペットボトル飲料やコーヒー、炭酸飲料の普及により、日本人のお茶の消費量は年々減少している。特に若者世代では、急須でお茶をいれる習慣が薄れ、抹茶は飲み物よりもスイーツとして親しまれる存在となっている。こうした変化に伴い、国内の茶葉消費量は長期的な減少傾向にある。
 一方、外国人観光客の間では日本茶への関心が高まっている。その理由の一つが、安くて品質が良いことに加え、円安の影響で以前よりもさらに手頃な価格で購入できる点だ。観光客がお土産としてまとめ買いする姿も目立つ。こうした需要の高まりを受け、「ななや」では通販サイトを活用し、実際に来店することができない人や海外の人でも日本茶を購入できるよう工夫している。国内で日常的なお茶文化が後退する一方、海外では高い評価を受けているという対照的な状況が続く。日本茶の価値を改めて見つめ直す機会になりそうだ。
 このような社会情勢の変化に影響され足を運ぶ顧客数が増えた半面、その分苦労も増えたと、「ななや」の従業員は語る。過去には来訪した外国人が、店頭においてあるゴミ箱におむつや古い靴などの店側が意図していないものを捨ててしまうことがしばしば起こり、その結果、ごみ箱の廃止などの措置が取られたそうだ。「日本との文化やマナーの違いを感じそのギャップを防ぐための施策の計画、実行に頭を悩ませた」と苦笑いをしながら語った。また、SDGs(持続可能な開発目標)を意識し、プラスチックを使わない素材のカップを導入した。環境負荷を抑えつつ日本茶を楽しめる取り組みを進めている。

 幅広い世代、そしてさまざまな国の人に愛され日々せわしなく営業を続ける「ななや」。インバウンド需要の増加に伴った来客数の増加を受け、いっそう店員同士の連携も必要になるなど大変だと感じることも多い一方で、顧客と直接やり取りをする中でやりがいを感じる瞬間も多くあるという。「一番やりがいを実感するのは、お客さんにサービスや商品を喜んでもらったとき、そしてその感想を直接聞く瞬間」。微笑みながらそう語る従業員の表情は、店を訪れてくれた客たちを笑顔にさせるという自信と誇りに満ちていた。

 取材班は、吉里駿生、森幹大、野村遥花、鈴木遥、森菜々子、今峰琉希(いずれも静岡大学人文社会科学部「地域メディア論Ⅰ」履修生)。

コメント

PAGE TOP