大分県の取り組みと将来展望

-桑田龍太郎副知事インタビュー-

 大分県の地域創生、商工労働、交通、観光、国際化等を担当する桑田龍太郎副知事に、大分県の魅力や課題、これまでに取り組んできたこと、これからの展望などについて聞いた。また大分県立芸術文化短期大学の学生に対するメッセージを頂いた。

【大分県立芸術文化短期大学2年・後藤優里、光永梨央】

学生時代は、情報発信に憧れ

――大学時代はどのような学生でしたか。また何に没頭しましたか。

桑田(以下◆) いま思うと、とても好奇心旺盛な学生だったと思います。いろいろなところに行ってみたい、経験してみたいと思い、アルバイトをしながら、あちこちを旅していましたし、おもしろいイベントがあれば参加していました。また、そのようななかで自分が見たこと、感じたことを発信したいと思っていましたが、当時はいまのようにSNS(交流サイト)がなかったので、学生新聞に記事を書いたり、キャンパス誌を熱心に編集したりしていました。元々、学者やジャーナリストのように、自分の意見を発信できる仕事に憧れがありました。


大分県の桑田龍太郎副知事(県庁副知事室にて)

――いま副知事として力を入れていることは何ですか。

◆交通関係、観光関係、それからあとは国際的なことで、世界の力を大分に引き込みたいという思いで取り組んでいます。また企業の力をもっと強くしたいと考えています。

 まず交通についてですが、交通には地域の交通から広域の交通まで、いろいろとあります。地域の交通では、いま鉄道とか路線バスが運転手不足で非常に厳しい状況になっている一方で、ご高齢のために自分で運転できない人が増えてきています。このようななかで、どのようにして人々の足を確保するのかが大事になってきています。他方で、別府などの観光地では観光客が増えすぎて、人を運ぶための足が慢性的に不足するという問題があります。そのため両方の面で、人々のニーズに応えるような地域の交通というのを考えないといけません。

 そのようななか、いろいろな取り組みを地域で行っています。分かりやすい例でいうと、別府ではライドシェアを始めています。タクシーの運転手さんだけでなく、一般の人でも希望をすれば、講習を受けて旅行客を運べるような仕組みが始まっています。また地域では、運転手が足りないため、同じ車に複数のお客さんを順番に乗せて、病院なりスーパーなどに連れていくという取り組みも行われています。近頃では、AIで最短のルートを検索して、効率的にお客さんを乗せて運ぶというシステムも開発されています。さらに将来的には、自動運転も有望です。私もアメリカに出張したときに無人タクシーに乗りましたが、海外では既に無人タクシーが実用化されています。日本でも東京のタクシー事業者が導入の準備をしています。このようなものが徐々に普及していけば、ドライバー不足は少しずつ解消されていく可能性もあると思っています。

 それから広域の交通については、未来に向けた大きなネットワークづくりが重要です。まず、大分県が昔から提言してきた「東九州新幹線」です。現在、九州のなかでは大分県と宮崎県だけが、新幹線が通っていません。本州に行くとき、乗り換えもあるし、時間もかかってすごく不便な環境であるため、広域の移動ニーズに応えたいです。東九州の各地が結びついて強くなることにもなります。もうひとつは「豊予海峡」です。大分と四国を海底トンネルでつなぎ、地域と地域をネットワーク化し、地方創生を促すという構想です。これらは地図が塗り替わるような大きな国家プロジェクトですので、そう簡単にはいかないのですが、地方から声をあげていかないと、なかなか優先順位が高まらないと考えています。

 他にも交通に関しては、大分空港の利便性を高めることが課題です。台湾便が2025年の春から週に2便運航を開始し、韓国だけなく、台湾にも直接行けるようになりました。また空港を楽しくしようということで、大分ハローキティ空港という取り組みも行っています。日出町にはご存じの通り「ハーモニーランド」がありますので、そのつながりでサンリオとコラボをして、名前を使わせてもらい、いろいろなキャラクターを空港の至るところに飾り付けてもらっています。

 それから空港関係でいうと、ホーバークラフトが2025年の7月から空港のアクセス便として就航しました。これによって大分市の西大分から35分で空港まで行けるようになりました。空港道路もありますが、それだと1時間以上かかってしまいます。海の上を通るので、別府湾の景色を楽しめたりしますから、バスで行くよりもホーバークラフトで行く方が結構、面白いと思います。ただ現状として便数が少なく、午前中の便が中心になっています。運転手の育成にも時間がかかっています。そのため大分空港の飛行機の便を増やすこと、ハローキティ空港のように楽しいと感じてもらうこと、空港アクセスをもっと便利にすることに力を入れています。


新しい交通手段として注目されるホーバークラフト

観光充実のため新たな財源も検討

――観光については、どのようにお考えですか。

◆海外の力を取り入れたいと考えています。日本にくる外国人観光客は年々、増加傾向にあり、2025年は、政府が掲げる年間4,000万人の目標を達成するものと見込まれています。いま大分県を訪問する観光客の半分ぐらいが韓国からのお客さんとなっており、今後はもっと他の国から来ていただきたいと思っています。そのためいろいろな国に、大分のことを宣伝することに協力してくれる旅行会社と関係を作り、さまざまなプロモーションや旅行商品の開発をしていきたいと考えています。外国人観光客が全国で増えていますが、各地で奪い合いというか、取り合いになるため、そのなかで大分の魅力をしっかりと知ってもらう必要があります。2025年は大阪・関西万博があったため、そこでプロモーションを展開したりしました。また日本人を含めた観光客の受け入れのためには、お金がかかるということもあり、大分に観光に来られた方にお金の面で助けてもらうような仕組みを考えています。一例として宿泊税の導入を検討しており、旅館・ホテルの宿泊代以外にお金を出していただき、旅行者にとって便利になるような案内や設備など、観光で役に立つことに使いたいと考えています。


インタビューの様子

国際交流の輪を広げたい

――外国との関係については、どのような考えをお持ちですか。

◆国際交流の輪を広げたいと考えています。2025年の春から、イギリスのウェールズ、南太平洋のフィジー、カナダのプリンスエドワード島との関係強化を進めています。ウェールズとは、ラグビーのワールドカップの試合が大分で行われたことをきっかけに関係が始まりました。行くには遠いところですが、ラグビーだけでなく、産業の交流に広げることができればと考えています。フィジーについては、大分県内にもつながりのある皆さんが生活しています。例えばラグビーの選手が、県内の大分舞鶴高校や大分東明高校に留学しており、若者の交流実績もあります。フィジーの方も、大分県は特別で仲の良い県だと思っていただいているようです。

 プリンスエドワード島は、赤毛のアンのふるさとで、赤毛のアンが孤児だった頃に預けられて、育った島です。人口が15万人くらいの島で、島という点から大分県の姫島村と交流があります。プリンスエドワード島で開催された島サミットに姫島村が参加した際に縁ができました。また玖珠町出身の児童文学者である久留島武彦の教え子である村岡花子が、『赤毛のアン』を翻訳したということでも関係があります。今後は友好関係をさらに高め、大分の発展につなげていければ良いなと考えています。

 いま大分県の人口は110万人弱ですが、在留外国人が2万人に増えています。外国人の方々は、留学生の方もいれば、労働力として就労されている方もいます。一方で、日本人の若者は、18歳、22歳など次の進路を選ぶ際に、大分県から出ていってしまうことが多いという現実があります。毎年、県内の日本人は数千人の転出超過となっています。。その日本人の減った人数と、大分で勉強したい、働きたいということで来る外国人の増加(転入超過)の人数はだいたい同じくらいであり、それで差し引きゼロになる。それでちょうど同じということです。もちろん日本人の県内移住・定住の取組を続けることは大切ですが、いまや外国人の労働力に頼らないと、大分の経済や産業はまわりません。そういう意味で、ベトナムやインドネシア人の方々に、大分に来て働きませんかというネットワークをいま作っています。外国人材を大分に受け入れていかなければいけません。

――企業の強化はどのように考えていますか。

◆ご存じのように熊本では近年、台湾のTSMCの進出によって半導体産業が盛んになってきています。大分も半導体関連企業の長年の集積があるので、台湾の力を呼び込みたいとお声かけをしています。

 また、大分には新産業都市として整備された巨大な臨海コンビナートがあります。この産業の力のおかげで大分市の人口は倍になりました。これは全国的に見ても、成功事例だと言われています。企業の力は大事であり、地域経済の源になります。大企業だけでなく、中小企業の活性化や、新しい経営者の育成、スタートアップ、イノベーション、若手の起業支援を後押ししたいです。よくお会いしているティーケーピー(TKP)代表取締役社長の河野貴輝さんは、大分県出身で日本の若手経営者のトップのひとりです。別府の新しい砂湯のリゾート施設は、同社が行政と連携して開業しました。このような若い経営者がどんどん出てくる、そういう環境作りができれば良いなと思い取り組んでいます。

大分の魅力素材たっぷりの写真集を作成

――大分の地域資源の魅力は何だと思いますか。またそれをどう磨いていけばよいと思いますか。

◆大分は観光、産業など、いろいろな意味で地域資源があります。今年、大分の魅力素材集というものを作り、食や文化、歴史、農業や水産業、観光、温泉など、全部写真で目に飛び込むようにまとめた冊子を作りました。敢えて文字を入れずに、写真だけに目がいくように作りました。今回この魅力素材集を作ってみて改めて思ったのが、大分の良さというものが県民も含めてあまり意識されていないことが、そもそも課題であるということです。大分はこういうところが良いところなんだということを、もっと県民自身が発信していくことが必要だと思います。

 県外の人に大分のイメージを聞いたら、温泉で有名な別府や湯布院は知っているという人は多いのですが、その他があまり知られていない。温泉以外の大分の特徴が、あまりピンときていないようなのです。県外の皆さんに、大分の魅力というものを、ストーリー性をもって理解してもらうことが必要なのだと思います。そのためには様々な素材を演出するという工夫も必要になってくるのではないかと思います。


大分県が発行している魅力素材集『OITA|大分 ESSENTIALS』

 2025年9月に大分市の中心市街で「かぼすジャック」というイベントがありました。街中にカボスをたくさん飾ったり、カボスのキャラクターの「かぼたん」がまちを練り歩いたりしました。ひとつの取り組みではあるのですが、大分といえば「カボス」という印象づけをして、ブランド化することを戦略的にやりました。地域にある資源を磨いて、ブランド化していくことが必要です。そしてそれを上手に発信することが大事だと思います。

 大分の魅力を県外の人に知ってもらうことは簡単なようで実はとても難しいのです。竹田(市)の城下町だったり、九重(町)の雄大な景色だったりと、大分の潜在力は非常に高いのですが、本来の魅力が発揮されていないところも意外とあるように思います。情報発信があまりされていないのが、とてももったいないと思っています。その意味でも、観光プロモーションをもっと上手に頑張っていくべきだと考えています。

大分自慢の産品を海外にプロモーション

 県産品である、農産物(例シイタケ)、畜産物(例牛肉=おおいた和牛)、海産物(例ブリ)を海外で売るようになっています。焼酎も大分の麦焼酎は国内ではブランド化されていますが、海外にも広げていこうという動きがあり、今年は二階堂酒造がドジャースと提携して、ドジャーススタジアムで「ニカソー」を売り始めました。海外の人に大分のお酒に関心を持ってもらうためにです。

 そういった観光地にしても、産品にしても、何かきっかけがあれば一気に人気が出ることもありますので、そういうことに期待しています。逆にいうと今は悩んでいても、チャンスや気づきがあれば、何か行動ができるのではないでしょうか。もちろん自分たちが良いものだとまずは思わなければいけないのですが、自信をもって外にアピールできるものであれば、あとはやり方次第ではないかと思うのです。まだ大分の人は少し、宣伝下手なところがあるように思えます。そもそも自分の地域のものを、ありふれたものとしか思っていないのかも知れないです。そのような地域資源に対してもっと自信を持って、宣伝をしていけば良いのではないかなと思っています。そういうことに、しっかりと取り組んでいきたいです。

社会に出た時に、すごく有益になる授業

――県立芸文短大に対する印象はいかがですか。また地域貢献活動の取り組みをどう見ていますか。

◆今回「キャンパる」(インタビュー)の話があったので、芸文短大が地域貢献活動をやっているのだと初めて知りました。芸文短大というと、どうしても芸術系の発表イメージが先行しています。例えばコンサートやったり、街中にアートいっぱい飾ったりということです。それはそれですごく地域貢献というか、地域に元気を与えているのだと思います。しかし芸文短大では、サービスラーニングという形でも地域に長年、貢献されている。こちらは、どちらかというと情報コミュニケーション学科を中心とした文化系の学生の皆さんによる活動なのかもしれませんが。

 「キャンパる」で既に発信されている記事を読みましたが、環境保全フォーラムとか、竹田のとうきびを実際に収穫・販売体験するとか、海岸のゴミ拾いのような、さまざまな県内における活動です。大学の講義で勉強するだけでなく、実践活動されている学生の皆さんが現場と関わって、活動を一緒にして、そこで新しい良い効果を生み出したという話が、読んでいてとても面白いです。レポートが非常にアクティブで生き生きとしていると感じます。単に話を聞いてきたというだけでなく、実体験されていることが「キャンパる」のレポートの上でもすごく面白く写っています。

 学生さん自身もインタビューだけでは得られない、実際の現場の理解が出来ているのだと思います。記事を読んでいても、より体感が伝わってくるような気迫を感じます。それはその地域にとってもとても素晴らしいことだと思います。例えば竹田市菅生のとうきび(とうもろこし)が芸文短大の学生の皆さんの努力によって日本全国で有名になったことも、その一例だと思います。地域にとっても、学生さんに体験してもらう、活動してもらうということで、若い人たちに知ってもらう機会になるし、それからいろいろな気づきを与えてもらうこともあるだろうし、宣伝にもなると思います。学生さんにとっても学校の勉強だけでは得られない、貴重な経験ができているのでしょう。


竹田市で実施された竹楽の支援(サービスラーニング)

 実際に皆さんが社会に出ると、いろいろ解決しないといけない課題があって、それをどういうやり方で突破していくのかということを、知恵を巡らせて取り組まないといけなくなります。だから多分、いまの実践的な勉強というのは、正にそういう地域の課題解決のための「戦い」を学生さんにチャレンジさせている。それを経験した学生さんが社会に出た時に、すごく有益になる授業科目ではないかと思うのです。ご指導される先生方は、とても大変だろうなとは推測していますが。

――いまの若い人々に対するメッセージをお願いします。

◆いまの若い人がすごくうらやましいなと思うのは、AIなどがいちばんわかりやすいのですが、どんどんと日進月歩でさまざまな技術が進んでいる時代を生きていることです。昔から考えたら夢物語のようなことが、実際にどんどんと実現できていくような時代になっているのは確かだと思っています。だから工夫次第で、道を拓(ひら)いていくことができるような時代になっていると思いますので、自分の可能性というものを小さく考えずに、大きな夢を持って羽ばたいてほしいと願っています。それが日本の元気につながると思っています。

 戦後すぐの時期に生まれた「団塊の世代」の人たちは、皆さんからするとご祖父母様の世代かもしれませんが、戦後の日本経済の発展を背負ってきた世代です。自分たちから見ても、あの世代の人たちはすごく元気があって、とんでもないエネルギーを持っていた。当時は技術もどんどん発展し経済も急成長していった時代で、未来に夢がありました。そういう夢を持っていたということも、元気につながったのではないかと思います。これからまたいろいろなことが進化・発展していく時代ですので、そういうなかで若い人に一番に言いたいことは「ぜひ夢を持って、自分の可能性を信じて羽ばたいてほしい」ということです。いまの若い人たちからすると、今の社会を背負っている大人が、ちょっと物足りなく見えるのかもしれないから、我々の世代がもっと元気にならないといけないな、とも思っています。若い人にはぜひ自分の力を信じて頑張ってほしいです。

学生記者一同:本日はお忙しいなか、貴重なお話をありがとうございました。


桑田副知事(中央)とインタビュー後の記念撮影

くわた・りゅうたろう 1969年、島根県生まれ。東京大学大学院修了。1994年、旧運輸省(現国土交通省)入省。2016年からの4年間、佐藤樹一郎大分県知事が大分市長時代に副市長を務め、20年4月から22年6月まで内閣府地方創生推進事務局参事官(総括担当)、22年7月から23年6月まで国土交通省総合政策局情報政策課長、23年7月から24年6月まで観光庁総務課長。24年7月、大分県副知事就任。

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