サービスラーニングとは何か 〜ボランティア活動を通じた社会貢献の魅力〜 綾部誠准教授に聞く

 大分県立芸術文化短期大学(芸文短大)では、「サービスラーニング」という特徴のある授業が毎年、実施されている。今回は同科目の担当教員である綾部誠准教授(情報コミュニケーション学科)に、サービスラーニングの目的や取り組み内容について聞いた。

【大分県立芸術文化短期大学1年・坂崎悠】

――サービスラーニングについて詳しく説明してください。

綾部: サービスラーニングとは、学生が大学で学んだことを地域の現場で実践し、社会に貢献する授業のことです。また活動をすることを通じて現場の課題を大学に持ち帰り、研究や更なる活動を通じて問題解決に取り組むものです。

 元々は、アメリカで120年度ほど前に経験に基づく学習の重要性が提唱され、その後、1970年代ごろから徐々に同国の大学などで発展してきたという歴史があります。芸文短大では20年ほど前からこの活動に取り組んでおり、2009年から11年までは文部科学省の大学教育推進プログラムにも認定されました。教育効果がとても高いことから、現在では全学の看板授業として、サービスラーニングを実施しています。本学の情報コミュニケーション学科では必修科目となっており、他の学科(美術・音楽・国際総合)の学生も選択科目として、多くの学生がこの活動に参加しています。

――どのような活動を行っていますか?

綾部: 芸文短大では環境美化、地域活性、農村支援、地域福祉、スポーツ振興、児童教育、多文化共生など、幅広い分野で年間40〜50ほどの活動を行っています。このなかから、学生は興味・関心を持った活動に申し込み、参加する仕組みとなっています。

 例えば、JR大分駅の近くにある府内五番街という商店街の活性化を目的に「府内キッズフェスタ」を昨年、に開催しました。このイベントでは、親子で工作ができるワークショップや射的、輪投げなど子供が喜ぶようなイベントを学生が主体となって考案し、企画・運営を担当しました。そのほかにも、より多くの人に商店街に来てもらうために、大分市内の幼稚園・保育園・こども園にお願いし、約1,000人の園児に描いてもらった絵を、牛乳パックのキャンドルに巻いて点灯するなど、学生が独自の工夫を行いました。その結果、当日はたくさんの親子連れが会場に訪れ、府内五番街は大いににぎわい、商店街の活性化に貢献することができました。

学生が企画・実施した府内キッズフェスタのキャンドルナイト

――この活動を通してどのような力を身につけて欲しいと考えていますか?

綾部: 大学では、どうしても学内だけで教育をし、それで終わったしまうことが多くなりがちです。しかし社会問題のほとんどは、大学内ではなく、大学の外に存在しています。それらを実際に自らの目で見たり、問題解決のために活動をしたりすることによって、より地域社会のことを深く学ぶことができ、この経験を大学での学びや、将来の仕事などにいかしてほしいと思っています。また周りを引っ張ることができるリーダーシップ力、仲間と協力することで培われる協調性、困っている人に自ら率先して手を差しのべることができる人としての優しさを、活動を通じて身に付けてほしいと思っています。

科目担当教員の綾部誠准教授

――なぜ綾部准教授はボランティア活動に力を入れているのですか?

綾部: 20歳の時に、青年海外協力隊(現、JICAボランティア)に参加したことがきっかけです。当時、南米で最も貧しい国と言われていた、ボリビア共和国(現在のボリビア多民族国)の道路公団で、工作機械に関連する技術を、労働者の方々に教えていました。青年海外協力隊から帰ってきた後も毎年、個人的に同国の大学や教育機関で、技術教育や人材育成に関わっており、今年で31年目になりました。

 また東日本大震災があったときも、当時所属していた山形大学で被災者支援の活動に参加し、民間の立場で復興支援に長く関わってきました。そのような意味では、私こそがまさに「グローカル(グローバルとローカルを合わせた造語)」な人材なのかもしれません。国内外の活動のなかでは本当に苦労する場面がいくつもありましたが、これらを一つずつ乗り越えることで、さまざまな能力と経験を身に付けることができ、人生でとてもためになっていると確信しています。

 そのような意味でも、私は社会貢献という行動自体が、人々の能力を向上させ、人生を豊かにするということを疑ってやみません。ですので、大学では積極的にサービスラーニングを展開し、地域貢献に取り組んでいます。

31年目となるサンアンドレス国立大学でのセミナーを通じた国際協力(ボリビアで)

――最後に学生へのメッセージをお願いします。

綾部: 芸文短大は短期大学のため、入学して卒業するまでわずか2年しかありません。しかし本学では、サービスラーニングを通じて他大学ではなかなか得ることのできない貴重な学びの場を多数、用意しています。イベントに参加することを通じて得ることのできる経験は、必ず学生の皆さんの将来に大きく役立つと確信しています。限られた時間ですが、社会貢献を行いながら、充実した学生生活を送ってください。

 そして、その学びや経験を国内だけにとどめず、ぜひ広い視野を持って世界へとつなげてほしいです。日本は島国で、エネルギー、天然資源、食料に乏しく、その多くを海外に依存しています。しかし近年は以前に比べ、特に開発途上国で日本人を見かける機会がめっきり減ってしまい、とても日本の将来を不安視しています。日本という国は、国際社会と関わりなしには成り立ちません。日本国内に目を向けることはもちろんですが、同時に外の世界にも目を向け、国内外で活躍できる人材になって欲しいです。サービスラーニングが、その一つのきっかけになってくれることを願っています。

サービスラーニングとして参加した大分七夕祭りの支援活動

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です