NPO法人おおいた環境保全フォーラム理事長・内田桂さんに聞く「環境保全の取り組み」
おおいたキャンパるでは、大分県で、海岸環境の保全やESD(持続可能な開発のための教育)の推進といった多様な活動を行っているNPO法人おおいた環境保全フォーラムの内田桂理事長に、環境保全の取り組みについてインタビューを行った。持続可能な社会の実現に向けて学生としてできることについて考えてみたい。
【大分県立芸術文化短期大学1年:宇都宮凛、宮本愛生、山本芽依】
NPO法人おおいた環境保全フォーラムについて
内田さんらは、生態系・生物多様性の保全を目的として2009年にNPO法人おおいた環境保全フォーラム(環境保全フォーラム)を設立した。特定非営利活動の種類として、①環境の保全を図る事業、②まちづくりの推進を図る事業――を実施するNPO法人である。設立当初は、絶滅危惧種であるベッコウトンボの生息地の保全から活動を開始し、これまでに、アライグマ生態系影響調査、ウミガメの保護活動、ESD教育事業の推進などといった幅広い活動を展開してきた。大分県内には、「つくみイルカ島展示サテライト(津久見市鳩浦)」、「はざこネイチャーセンター(佐伯市米水津)」、「遊学の森・ととろの森自然学校(佐伯市宇目)」といった活動拠点があり、地域と連携した取り組みを行っている。
内田さんは、2011年以降、特にウミガメの保護活動に力を入れてきた。主に、大分県内で海岸清掃やウミガメの調査を行っているが、最近では屋久島においても活動を行っている。屋久島では近年、国内外来種であるタヌキがウミガメの卵を食べてしまうといった問題があり、タヌキ対策の活動に取り組んでいる。また、主に子どもを対象としたESD教育事業の推進にも力を入れている。内田さんは、環境教育を受けた子どもたちがこれから先、NPOという立場だけではなく、ボランティアとしてでも、一個人としてでも、環境保全に関わってもらいたいと語っていた。環境保全フォーラムは、地域に存在する環境問題に対応するだけではなく、未来に向けた取り組みも積極的に行っている。

大分県立芸術文化短期大学と連携した活動
環境保全フォーラムは、地域に存在する大学などとも連携しさまざまな活動を行っている。ここでは、私たちが所属する大分県立芸術文化短期大学(芸文短大)と連携した活動について紹介したい。環境保全フォーラムは、2022年度から芸文短大と連携し、海岸清掃活動などに取り組んできた。これらの活動は、芸文短大が実施する「サービスラーニング」や「地域社会特講」といった科目の一環として実施されている。「地域社会特講」という科目では、内田さんに講演をしていただき、座学で環境保全フォーラムの取り組みやウミガメが置かれた状況、プラスチックごみの現状などについて理解を深めた。さらに、地域活動と教科学習を結びつけ、学生が学んだことを地域活動の場で生かす科目である「サービスラーニング」では、環境保全フォーラムが主催する活動に多くの学生が参加している。
私たちは、6月28日に開催された「別府湾エココーストプロジェクトin磯崎海岸」と7月5日に開催された「別府湾エココーストプロジェクトin関の江海岸」に参加した。異例の早さであった梅雨明け後ということもあり、両日とも日差しが強く、とても暑い中での活動となった。一見きれいな海岸に見えても、ゴミは草にまぎれていたり、砂に少し埋もれていたりして、予想以上にたくさんのゴミを拾うことができた。ゴミの中には豆腐の容器といった家庭から流出したと考えられるものもたくさんあった。また、カキ養殖のプラスチック製パイプが多くあり、家庭や漁業の現場など、さまざまな場所からプラスチックごみが流出していることを実感することができた。海にあるゴミがウミガメや生態系に悪影響を与えていることを知識として知るだけではなく、実際にそういったゴミを目の当たりにしたことで、環境保全への意識が高まった。内田さんは、私たち参加者の熱中症対策のために冷えた飲み物や塩漬けキュウリを用意してくださった。ウミガメだけではなく、参加者のことも大事にしてくださる内田さんはとても心優しい方だと感じた。


今後の展望と学生としてできること
環境保全フォーラムの今後の展望としては、新たな活動を増やしていくよりも、現在の活動を誰かに受け継いでいってもらうことに重点を置いている。内田さんは現在72歳となっており、後継者を見つけて事業を引き継いでいく方策を模索している。また、現在、屋久島や各地の観光地ではオーバーツーリズム問題が発生していることから、ESD教育事業やエコツーリズムを推進することで自然と観光のバランスを保つことが重要であるという。さらに、いつの間にかそこにあった環境や生態系が失われてしまうという「目に見えない変化」が進行していることから、そうした変化に気づき、その変化を学び、大人から子どもへと次世代に伝えていく「循環」が持続的な環境保全につながっていくと内田さんは考えている。また、インタビューのなかで内田さんが話していた「目の前の生物種だけではなく、その背景に目を向けることを大切にしている」という言葉が印象に残っている。内田さんの言葉や活動からは、目の前の対象にだけ目を向けるのではなく、視野を広げて、背景にあるさまざまな状況に目を向けていくことの大切さを学ぶことができた。
私たち学生としては、日々の「目に見えない変化」に意識を向ける努力をし、視野を広げていくとともに、目の前にある小さなことから行動を起こしていくことが大切になると考えた。