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地域と共に歩む栃木SC 子どもの“ゆめ”をアシスト

 地元・栃木県に根差す市民サッカークラブとして、多様な地域貢献活動を実施している「栃木サッカークラブ(栃木SC)」。地域とともに常に前に進み続ける栃木SCは、どのような将来像を描くのか。取材班は、クラブの地域貢献と将来のありかたについて、栃木サッカークラブ・パートナーシップグループ責任者の笹川剛さんに話を聞いた。【栃木SC取材班】

ピッチ上を超える存在へ

 プロスポーツクラブの役割は、勝敗や順位のみにとどまらない。地域に根差し、人々の暮らしや社会課題とどのように向き合うかが重要である。少子高齢化や地域コミュニティーの希薄化が進む中、スポーツが果たすべき役割は競技としての魅力発信のみならず、人々をつなぐ存在としての価値にも広がりをみせる。栃木県を本拠地とし、国内プロサッカーリーグの「Jリーグ」に所属する栃木SCも、地域や人によりそってきた市民クラブのひとつだ。栃木SCは「地域と共に栃木サッカークラブのある生活の喜びを創り、社会を豊かにする」という理念を掲げ、競技力の向上とともに地域社会への貢献を重要な「ミッション」としている。

 さらに栃木SCが注力するのは、目に見えるイベントばかりではない。設立当初から一貫して大切にしてきたのが、将来を担う子どもたちとの関わりである。近年、少子化やデジタル機器の普及にともなう運動機会の減少と体力の低下、地域社会との接点の減少によるつながりの希薄化などの課題が挙げられる。地域に根差すプロスポーツクラブとして、こうした課題に対し真摯(しんし)に向き合い続けてきた形が、学校や地域と連携した社会貢献活動である。

心を開く 子どもたちとの深い交流

 栃木SCはこれまで多くの社会貢献活動に取り組んできた。「ゆめプロジェクト」もそれらの活動の一環だ。「ゆめプロジェクト」は、選手が県内の小学校を訪問しサッカー教室を開催する取り組みで、クラブ設立当初から最重視されている活動のひとつであり、子どもたちの心身の健全な発達や、将来の夢・地域とのつながりを目的とした活動となる。

 子どもの夢を応援する「ゆめプロジェクト」の現場。そこには、子どもたちと同じ目線で笑いあう選手たちの姿がある。現場でどのような会話をするかは選手たちにある程度任されているため、自由にさまざまな会話が楽しめることも特徴だ。会話の内容はサッカーの話題から、子どもたちの好きな授業科目などたわいのない日常会話まで多岐にわたる。どんなに何気ないものであっても、選手たちはこうした会話のひとつひとつを大切にしている。活動の中で選手たちは、いわば近くにいる〝普通のお兄さん〟として子どもたちに接しているが、それはなぜか。そこには子どもたちが選手に対し親しみやすい存在として心を開いてもらえるようにしたいとの思いがあるようだ。「心の交流こそが『ゆめプロジェクト』の第一歩」と笹川さんは話した。

「ゆめプロジェクト」の活動風景(栃木サッカークラブ提供)

目的は「きっかけ」をつくること

 一般的なサッカー教室は技術の向上を目的とした形が多いが、「ゆめプロジェクト」では、元気よく楽しく、みんなで体を動かすことが最優先される。この活動について笹川さんは「サッカーを好きになってほしいという思いはもちろんある。しかしそれ以上にサッカーを通して、この活動を自分の得意分野に気づくきっかけとしてほしい」と語る。さらにこの活動には子どもたちの感性を磨くことで将来の選択肢を広げ、やがて地元・栃木県に貢献してもらうという社会的意義も込められている。笹川さんは「プロスポーツクラブと接することで、子どもたちに地元・栃木を誇りに思える経験や、栃木に生まれ育ってよかったと感じられる体験を届けたい」と意気込む。

サッカー教室で笑顔を見せる幼児たち。クラブは小学校以外にも「わくわくグランディ 栃木SCキッズスマイルキャラバン」と称し、幼稚園・保育園への訪問を積極的に行っている(栃木サッカークラブ提供)

多角化する支援

 栃木SCの子ども支援は、今やグラウンド上のみにとどまらない。栃木SCは宇都宮市内の「カンセキスタジアムとちぎ」をメインに開催するホームゲームにて、試合観戦以外のイベントや体験型企画を数多く開催してきた。ホームゲーム(本拠地での試合)では試合前後やハーフタイム(前後半の間の休憩時間)を活用し、サポーター参加型イベントや季節に合わせた催しが行われる。子どもから大人まで、幅広い世代が楽しめる工夫だ。

 また年4回程度、スタジアムの防音室を利用して、外部の刺激を遮断し落ち着いた環境で試合を観戦できる「センサリールーム」を運営している。これは発達障害の特性により人混みや突発的な音に敏感な子どもたちに配慮した取り組みである。今日、スタジアムは単なる試合会場ではなく、だれもが特別な時間を共有できる「すべての人に開かれたスタジアム」としての役割を担うようになりつつある。

 こうした取り組みの積み重ねにより、クラブを応援するファン・サポーターは着実に増加し、地域との関係もしだいに強まっている。またパートナー企業とも協働し、多くの支援を実施している。宇都宮市内に本社を置く食品会社「フタバ食品株式会社」と合同で実施する活動はその一例だ。栃木SCは同社とともに、子どもたちの継続的な運動のためサッカーボールを寄贈する環境面の支援や、食育のためプリントを活用し健康な体づくりや食事の大切さを伝える教育支援などを行っている。グラウンド上から学校、サッカーの技能から健康教育まで、広い範囲をカバーする栃木SCの支援はまさに〝マルチタスク〟だ。

地域貢献にも高い「質」を

 これまで数多くの地域貢献活動を実施してきた栃木SC。同クラブは現在、貢献活動の「質」と「量」のバランスについて、ブラッシュアップしている。これまでに多くの貢献活動を実施してきた実績を持ち、活動の「量」は豊富だ。いっぽう「質」については活動よっては、「地域貢献活動の『質』を上げるため、さらに多くの人や企業、団体と協働したい」と笹川さんは前を向く。

 栃木SCは現在、循環型プロジェクト「FANLOOP(ファンループ)」を展開している。これは地域のファンを起点としたアップサイクル(本来捨てられるはずのモノに新たな価値を加えて、元のモノより価値が高い製品に生まれ変わらせること)で、モノの付加価値とともに、地域におけるファンや地元、商店街を巻き込んだ応援サイクルを創出するというものだ。この応援サイクルをきっかけに持続可能な循環型社会の実現と、地場産業やサッカーを通じてSDGsに関連づけた社会貢献を目指している。今後「FANLOOP」をパートナー企業から自治体まで幅広く連携させ、より多くの人や団体を巻きこむことで活動の「質」をいっそう高めていきたいとの考えだ。

 SDGs(持続可能な開発目標)活動の様子 (いずれも栃木サッカークラブ提供)

 栃木SCは1947年の創部以来、地域密着型クラブとして、サッカーを軸に世代や立場を超えた交流を生み出してきた。試合への勝利だけでなく、人と人をつなぎ地域に活力を与える存在として、その役割は年々大きくなっている。スポーツを通じて生まれる感動や一体感は、地域に前向きな変化をもたらす力を持つ。こうした思いを胸に、クラブは今後も地元・栃木と歩み続ける構えだ。笹川さんは「今後も栃木SCとして、サッカーをはじめスポーツを通して、みんなが自分らしく生きられる社会づくりに貢献していきたい」と力をこめた。その言葉には、栃木の将来を見据えた揺るぎない決意がにじんでいた。

 黄色に輝くクラブの挑戦は、これからもピッチを越えて夢と希望を与え、栃木のまちと人々の心を温かく照らし続けていくはずだ。

栃木SCの取り組みを語る笹川さん

 取材班は、佐太木陽登、清水隆太、加藤優依、柿沼美希、落合輪勲、関根貫太(いずれも宇都宮大学地域デザイン科学部「地域メディア演習」履修生)。 

 栃木SC(栃木サッカークラブ):1947(昭和22)年、「栃木蹴球団」として創設。県内サッカークラブで最古の歴史を持つ。2009(平成21)年、Jリーグに加盟。宇都宮市の「カンセキスタジアムとちぎ」をメインにホームゲームを開催。チームカラーは黄色。

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